テキレボ準備号・新刊ダイジェスト①

お久しぶりです。
多忙で、ブログの存在などすっ飛んでお空の彼方でした。
本日も文フリ大阪と本の杜があったそうですね、参加されたかたはおつかれさまです。生憎と修羅場の最中でどちらにもゆけなかったのですけど、どちらも参加してみたいイベントです……。

気持ちを切り替えまして、本日はすてきなテキレボ準備号です。一冊ずつ記事を分けるので、今回は①とナンバリングしてみました。

イベント前恒例・新刊ダイジェストをするので、ぜひ読んでね◎

まず!
10月8日、浅草は都産貿センター台東館で開催されるText-Revolutions4。
もうブースも発表されました、当サークル・ヲンブルペコネは【A-22】です!

そしてWEBカタログのヲンブルペコネの頁はこちら。
https://plag.me/p/textrevo04/1969
後述するお買い物代行サービスにおいてもカタログ大事!なのでぜひチェックしてみてください。


なにかを頑張ってしまったので新刊が2冊出ます。
かつてない優等生なのです。ポカは帯の発注数をまちがえるくらいで、財布と精神に大打撃を食らうようなショッキングなことは起きていません。万事順調ゴーゴーテーブルダンス。

前回のブログ記事で水煮さんにお話の分析をしていただいた作品が、今回の目玉です。




『赤錆びと渇きの。』
B6判80頁カバー付き、600円

赤錆びの雨が降り、街は陰鬱に彩られていた。
青年マリアは、薄暗い雨降りの昼に、《人形店》の主とその作品を殺害した。己のなかの殺人者の影に喘ぎ、苦しみ、悶える彼は、自らが手にかけたはずの少女人形オルガと再会する。殺したものと殺されたものはやがて奇妙な関係を築き、餓え渇く魂を埋めるため、ひたすらに腕を伸ばしはじめる――。
著・跳世ひつじ 装画・あるびの

◆本文抜粋

 バスタブに飛び込むと、蘇る心地がした。熱い湯に触れたせいで、いま再び涙が、止まらなくなる。これからしばらく、水というものを見るたび、或は熱というものに触れるたび、オルガは泣いてしまうかもしれないと思った。ひつようなものがあるとその幸運を思って、泣かずにはおられないだろう。
 ヴィヴィアンネのいた場所を、水や熱や、或は名も知らぬ誰かで埋める。
 これからのオルガの、いましばらくの行動指針ができた。生きるために。オルガはものを考え、みずからの命を延ばしてやらねばならない。生活せねばならない。生あるものとして在ることを、望んでくれたヴィヴィアンネのためにも。
(植物文様の絨毯を買おう。店の場所を、居心地の良い応接間のようにしよう。ショーウィンドウからのぞいたときに、まるで人形の家かと思うような、趣味の良い部屋をつくる。そうして僕は、誰かを待つ……)
 流れる涙のままに、肩に熱い湯をかけて、目を瞑った。
《人形の生活》より


 汲み置いた水で顔を洗って、鏡を覗き込んだ。目のしたにひどい隈があるほかは、いつも通りだ。ヴィヴィアンネの人形よりはうつくしくなく、そこらの人間よりはうつくしい顔。荒事屋の仕事には向かない美貌だった。
 目のしたをごしごしと擦ってみても、無論消えるはずもない。擦った目許はじんわりと赤くなり、淫乱な性を暴かれた気がして吐き気がした。もう一度寝てしまおうか。ロンはこの部屋の存在を知らない。誰も知らない。だからマリアは、ここにいる限りずっと、孤独を貪ることができる。安心できるのはここだけだ。ホーンで唯一の場所だ。そのはずだ。
 寝台に横たわったまま、行儀悪く堅パンを食べた。こぼれた屑を手で払い床に落とす。物陰に潜んでいた虫が、かさこそと動いて屑を運び消えた。閉じきりの部屋にいつの間にか這入りこみ巣食った虫だった。
《青年マリア》より


 胸に、オルガが額を擦りつけてくる。
「起きていたんだね」
 くすくす笑いが返されて、マリアもおかしくなった。
「俺はおまえを部屋に置いたら、仕事へ行く。帰らないで。俺が戻ったら、おまえは俺の名まえを呼んで」
「ねえ、僕のことがすき?」
「今晩は魔術師協会側の人間を殺すんだ。嫌な仕事ばかりだよ」
「ねえ」
「うるさいな」
「痛い」
「すきなんだろ、痛いのが」
「すきだよ……」
 オルガの顏は見えない。底知れない笑みがあるだろう、それだけはわかる。あまく高い声の幼さよりももっと不気味な、玉虫色の眸の底で、うつろを渦巻かせている。マリアはくちびるを舐めた。雨の冷たさが躰の外を這うほどに、オルガの薄い肉を通じて感じる熱が、心臓に生を感じさせた。
《餓え彷徨うものたち》より


また今回は、作品紹介アシスタント様に特設ページとイメージをつくってもらいました。こちらではこのブログとはまた違う箇所からの抜粋が読めます~。

作品紹介アシスタント『赤錆びと渇きの。』特設ページ





こちらが『赤錆びと渇きの。』現物になりますー!
装画はあるびのさま。本編の場面や雰囲気をありありと表現してくださいました……!もうほんと、うつろな眸のマリアと、その手を齧るオルガ、うつくしすぎますね……。ずっと見ていられる表紙画ですよーっ。手フェチとしてはマリアとオルガの手の重なるところ、サイズや表情の違いがたまらないです。あまりにもかわゆい。そしてうつくしい。

うしろにはトレぺで縦帯です。個人的にあらすじ印字があまり好きではないので、帯でかけてみました。「貴方は僕を欲望する」がキーワードです。はたして。

今回、かなり好き放題、性癖大暴露でいろいろすきなシーンを書きました。
抜粋箇所も気に入ってるところを選んだんですけど、ほかにもたくさんいいシーンがあるのでぜひ読んでいただけたらなあっと思います。表紙やあらすじの雰囲気からお察しいただけるとは思いますが、ハッピー・コメディ・いちゃらぶなどからはかけ離れており、若干の暴力描写も存在しますので、苦手なかたはご注意ください。

本作はテキレボ4内企画・悪女小説フェアにも参加しております。
此方のフェアはMAP配布のほか、【E-24・25】で参加サークルの見本誌展示もやるそうですので、テキレボ内中央の公式の見本誌棚のほか、こちらでも立ち読みしていただけます。悪女の登場する小説を集めた、非常に心そそられるフェアですので、必見かと!
わたしは絶対ここの見本誌棚みにいきますよ。悪女大好きなので……。


そして、当日テキレボに来られない!という方へ!
必見お買い物代行サービス→ http://text-revolutions.com/event/archives/4441
手数料500円、テキレボのスタッフさまが、貴方のかわりにおお買い物をしてくれるというテキレボの目玉サービスです。
※取り置きや予約とは違うので、売り切れてしまった場合などはご用意できませんでしたということになります。尚、その際も手数料はかかりますので、ご注意ください。

こちら申込が25日までかな?
リンク先を参照してくだされば幸いです。ヲンブルペコネも新刊は十分な量を持ち込みますし、11月の文フリ東京、そして通販も予定しているので、入手はできると思います。
ですが、テキレボではほかにも素敵な作品を展示・頒布するサークルさまがたくさんありますので、「お買い物代行サービス」を利用してがっつりごりごりお買い物をするのも吉です。
なんといっても当日企画の300字ポストカードや無料配布も、カタログに登録されているものであればなんでも注文できるところがミソですよ~。
『赤錆びと渇きの。』も最速はテキレボ当日&お買い物代行サービスです◎


というわけで、告知すべきことはゆった!
『赤錆びと渇きの。』のお話をもうすこししまーす。

今回の著者は跳世ひつじ。
がっつり(?)ファンタジーです。イベントで純文学ブースをとり、落山羊という名まえで活動する以前、わたしはまったく別の名義でファンタジーばっかり書いていました。もはや砂漠の砂のほんの一粒のようなものなので深くは触れませんが、とにかく量!そして萌え!みたいな、好き勝手にやるのがめちゃくちゃにたのしかったです。で、前回はそんな砂をサルベージしようと思って躊躇い、『鰐と運命的滅亡のメルルカ・アンポルカ』にいつのまにかすり替わっていたのですが、今回のテキレボでようやくお披露目できます。それが嬉しくて、もう一冊新刊ができたりしたのですね。
なんとなく不安などあって、今回二人の方に下読みをしていただきました。改めて感謝申し上げます。装画のあるびのさまはじめ、下読みをしてくださった方、妹氏、などなどいろいろなかたに一緒に作品をつくりあげてもらったなーとおもいます。いまはひたすら頒布が楽しみです。増刷したいーっ。
赤錆びはたいそうなことが起こるわけでもなく、旅もせず、さりとて日常もののような安心感もないという鬱陶しい作品なのですが、とても気に入っているので、たくさんのひとに読んでもらいたいです。うつくしいおとことおんなと、汚い街と欲の影。うつくしいのに強くない、殺しをするのに殺されたような顔をして歩く。矛盾と自己愛をはちきれそうに抱えたマリアとオルガになりました。まだ頒布してもいないことを忘れそうです。なんだかんだ、初稿をあげたのはかなり前だったので。ぜひぜひ、併せてこの記事の前のブログを読んでみてください。創作と星占いを紐づける、水煮さんとのおもしろいお話ですので。その際に分析してもらった作品が、この『赤錆びと渇きの。』です。

つぎのブログでは②として、もう一冊の新刊『眩暈の紫』についてお話ししようと思いまーす。
お買い物代行サービスなどは申し込み締め切りもありますので、お考えのかたはお急ぎくださいませ~。ヲンブルペコネがそのなかにすべりこめたらうれしいでーす。


それでは今日はこれまでで。

ヲンブルペコネ一同

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