2014年11月12日水曜日

「ドライ・メライ・ドーリーズ」本文サンプルなど

文フリが近づいてきております。

本は先月にできあがっていたので、栞や無配のコピーをつくるぞ!と意気込んでいたのでした。
が、しかし。
まだ何にも手をつけていないのが我ながら不思議です。小説もまったく書いていないです、近ごろ。なので余裕をもって無配を考えるつもりが、ひねり出さないといけないような気がしてきました。過去作を使ってもいいんですけれど、長さがちょうどいいのがなかなか見つからず、そのあたりなやましいですね。

twitterアカウント@You_Ochiyama

にて、第十九回文学フリマで頒布する「ドライ・メライ・ドーリーズ」の本文抜粋を投稿しております。ちょくちょく宣伝しているので、ツイッターをやってる方は、のぞいてみてください。建設的なつぶやきはできないので、基本的には唐突に抜粋と宣伝を投げるアカウントです。たまに落山が出現して、進捗進捗とうなったり「何もできてない」アピールをしだすメンドクサイ代物でもあるとかないとか。

そして今回のブログでは、短篇タイトルすべてとその本文抜粋で紹介していこうかと思います。掌編と言ったほうがいいくらい短いものも多いので、紹介分よりも抜粋のほうがわかりやすいかなと。


◆復活祭
 このキリストは畸形児だ。十三日目のキリストだからだろうか。それとも、彼がいかがわしいピンク色をしたベッドで懶惰な復活を遂げてしまったせいだろうか。
「キリストの、二度目はきっと、腹上死」
 口の中へ放り込む。くたくたとしていて、骨やらなんやらの存在はあまり感じられなかった。多分キリストは苦行を重ねたとしても、気合とか根性とか、そういう泥臭いものとは無縁だからだろう。


◆絹のエトランゼ
 六月の雨を呼ぶぬるんだ空気は、夕の薄橙のヴェールを透かして、僕たちを締めつけるように抱きしめている。こうしてふたりで手を絡ませて歩いている、その時間は、瑪瑙に閉じ込められた水と同じに、永遠に揺さぶられ続けるのだろうか。
 どこにも行けやしないのだと、痛いほどに感じるのは何故なのか。
 あのバケツの中の汚水は僕のからだの隅々まで沁み渡ったというのに、僕と繭はこうして再び名前を取り戻し、手と手を複雑に固く結んでいるというのに、息苦しさは額を撫で、シャツと肌のすき間を侵す。


◆さなぎ病
 昆虫採集に熱中する人は、天才なんだって。ファーブルだけじゃないんだって。
 だからもしかすると、望月も天才なのかもしれない。サラリーマンだと名乗る彼が本当はフリーター三十四歳だとしても、まだその才能は蕾なだけだ。いつか花開く日を待ち続けて、こうして馬鹿みたいに暑い真夏の公園の、さらに馬鹿みたいに暑い地表近くで、才能の欠片を探している。
 そう思えば、さっきのかまきりだって、かわいい。そうでしょ?


◆愛しのモリー
 モリーのことは大嫌いだった。モリーは大きな猫だった。モリーは、そう、独占していた。モリーのことを嫌いなのは、お母さんのことが好きだったからだ。モリーはかわゆい猫だった。お母さんは猫らしくないといってよく、モリーのことを蹴った。わたしはモリーを庇った。モリーはわたしによく懐いた。モリーは、モリーの緑色のプラスチックは、ぷつりと薄皮の破れる感覚は軽く、そのあとは固いけれど湿った、吐き気を催すようなあの……あの感触を、何にたとえたらいいのだろう。ゼリーの中に、蠅が閉じ込められているときのような、シチューの中に、小石が入っているような。あの、生理の齟齬が、わたしの肌を粟立てて、背筋を戦慄させ、指先を震わせた。


◆ボイルドエッグ・スクランブル
 退屈な日常に、起こりそうで起こらない喧嘩。悪感情は誰もが持っているけれど、それを発露させるとなると、途端に躊躇いだす年ごろのわたしたち。それが見よ、町田みちるの、素直さを。
「あなたが見下げたひとだってこと、よくわかった。私はただ、藤川君を変な目で見るのをやめなさいと言いに来ただけ。彼はとても迷惑してるの。あなたみたいな不良女、見るだけで藤川君がケガレル」
 晶が吹き出したのが聞こえた。彼は手のひらで口を覆って、かすかに震えていた。わたしもまったく同じ気持ちだ。ケガレル――ケガレル? はじめて聞く言葉だ。ケガレル、だなんて、ケガレル、とはいったい。わたしは町田みちるを惚れ惚れと見上げた。


◆葉子
 唾液に濡れた舌先が見つける、食べ物ではない何か。味はしない。声なき断末魔に脈打って、わたしの舌を嬲る蝶々が、不気味だ。しかし、心地よくもあった。それはありがちな興奮などではなく、過去と感傷に基づいた、いわば映画の回想のようにセピア色をした、褪せた青春の仲間だ。子ども時代の残酷と不条理とを思い出して、当時の自分に想いを馳せ、戻りたいとは望まずとも、せめて今だけはと静かに願う気持ちにも似ている。


◆グリーン・スナップ・テトラ
「なんか、懐かしいんだよね、雲居みき」
「それさあ、水鳥はお父さんがほしいだけじゃないの」
「そうかなあ」
「そうだよ」
「でも、そうだとして、問題なくない?」
 そう問うと、朱莉沙は黙り込んだ。慣れない熱い湯のせいか、彼女の顔はすでに真っ赤だ。ゆで上がった猿のお尻みたいだ。



という風な、全七篇です。
どうでしょう、お気に召したものはありましたか?
作者としてはどれも好きですが、読み返すと「絹のエトランゼ」と「愛しのモリー」がいいなあと思います。前は確か、「ボイルドエッグ・スクランブル」がお気に入りとも書きましたが。

自分の作風と言うほど数をかいていないので、何とも言い難いところはあります。耽美っぽいところが多いときもあるし。

「絹のエトランゼ」「ボイルドエッグ・スクランブル」「グリーン・スナップ・テトラ」のみっつは高校生が主人公です。このあたり青春ものを書くぞ!と思ってできあがった湿度が激しく高い、もはやじめじめを超えた変青春ものになっていると思います。多分グリーンがいちばん読みやすいんじゃないかなあなど。

個々の作品について、とくに目論見などはなく、込められた深い意味なんてものもありません。書きたかったものを書いているだけです。何かひとつでも心に触れるものがあれば、「ドライ・メライ・ドーリーズ」、ぜひお手にとってみてください。


11月24日(月)
第十九回文学フリマは東京流通センターにて。
当サークル【ヲンブルペコネ】は【B-12】というスペースでお待ちしております!

「ドライ・メライ・ドーリーズ」
文庫判136ページ、300円にて配布。
なお、無配と栞をこれから!準備します!



落山羊

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