2015年10月4日日曜日

『ラプラスの新悲劇』抜粋&紹介


こんばんは。

ヲンブルペコネはいろいろな苦難とかを越えて、未だに新刊が出るとは(こわくて)言えないのですが、七割がた出ます。なんと現物が手元に届くのはおそらく8日!テキレボは10日!

ぎりぎりなのはもうすべてこの羊めが悪いのでした。

いろいろ立て込んでいて頭がぽかーんとしてしまって、とんでもないことをやらかしていたりしてました。元気です。先程起きました。

 

テキレボ2は10月10日土曜日、浅草は台東館での開催でございます。

ヲンブルペコネのブース番号はC-36】!

 

 

今回はイベント前ですので、新刊の内容を抜粋して紹介する仕様です。

 

 

『ラプラスの新悲劇』

文庫判・本文136頁 頒布価格400円

――「悲劇」の再解釈をこころみた、ポップでギャングで立体的な極彩色悲劇の短篇集。「あなたは生きているのか?」全五篇収録。

 

ということで、煽っている作品紹介です。

個人的にこの作品集でやりたかったことはやりつくせて、とっても満足のいく出来になりました。

そうですね、今までの作品がわりあい「うつくしさ」というところに重きを置いたからこその「醜悪さ」を開いてきたとすると、今回は「醜悪さ」のために「醜悪さ」あるいは「かわいさ」を開きました。わたくしは特に自分の作風と離れたつもりはないのですが、客観的にみると「ドライ・メライ・ドーリーズ」や「うつくしき貌」などからはぐーんと離れているのでご注意ください。

 

まあ注意書きなどは野暮ですけれど。読んで感じていただければ嬉しいです。
どんとしんくふぃーる……。

 

「あなたは生きているのか?」

 

読んで、なんだありきたりだなと思うこともあるかもしれませんが、優れた悲劇はわたくしなぞが描くまでもなく研ぎ澄まされて生み出されてきたものです。それを揶揄するつもりも一切なく、むしろ慕っているということを感じてもらえればうれしいなあと思います。多くを語るにほんとうに向かないテーマだなと思うので、今回は宣伝に苦労しているわけです。

 

裏テーマは幼児性、ポエム、それから深層、です。

 

嘘と真実の境界線のなさ、表層と深層の区別されなさ、大切なことたくさん書けたかなと思います。とてもベタなモチーフを多用して、それらをわかりやすく描きだすこと、楽しかった。筆がノリすぎて時おりずっこけているようなところもありますが、若さです。

さて、野暮天の語りはもううんざりでしょう。抜粋に参りますね。

 

収録順は、

 

・豚の巡礼記Ⅱ
・アップルズ(再録作品)
・ロリポップ2015
・回転性盲目による社会のための回天革命テロリズム
・豚の巡礼記Ⅰ

 

と相成りました。前回紹介からちょっとタイトルが変わっているものもあります。

 

◆豚の巡礼記Ⅱ

 扉を押し開けると、すぐ横に銀色の盆を捧げ持ったカシャが佇んでいた。息を呑んだ。彼女は気配というものをまったく纏っていないようだ。ただただ茫洋とした不安の塊が、肉を成し、意志を持たぬままに歩き、生きているふりをしているようだ。カシャは、私が抑えたままの扉をすり抜けて、ベッドサイドの机に銀の盆を置いた。少しの音も立てず、盆を机の天板と平行に、まっすぐと下ろした。それから急須を横に置き、盆に載せてあった湯呑をひっくり返す。お茶を注ぐ時も、この部屋は、建物は、静寂の裡にあった。私は息をつめたまま扉の陰で彼女を見ていたが、一連の動きを終えたカシャも、そのままベッドサイドから私を見つめている。

 

 

◆アップルズ

 小桃が小さく咳払いをした。この間に、小桃は「林檎と人身事故の関係」を結んだに違いない。言う、「人身事故によってひとが反転するとして、つまり、どうなるかというと血がバアーッて出て、ひっくり返しになるんだけど、それは林檎と同じで、赤が外っかわで白が内っかわってことで、ひっくり返しになったひとが林檎と同じと言うことは、ひとをひっくり返しにすることができる人身事故と林檎は、み、み、密接な関係があって、詳しいことは難しいから省くんだけど、えっと、人身事故と林檎は、親戚……みたいなもので、ひっくり返しのひとと林檎はだいたい同じということなの」。

 

 

◆ロリポップ2015

街のケーキ屋さんのシャッターは閉まっていた。街のケーキ屋さんのシャッターは、シャッターの段に合わせてピーコックグリーンとコーラルピンクに塗り分けられていた、ボーダー、モコは街のケーキ屋さんのシャッターを滅茶苦茶に蹴りまくった。がしゃんがしゃんという耳障りな音が近所中に響き渡る、日付変更から十分、モコの二十四歳の生誕祭が幕開けなしに幕引きを迎えてから十分、悲しみと極彩色の熱帯夜が、モコの19センチの足から繰り出される超人的なスピードとキレ・重みを兼ね備えたキックで足蹴にされていた。失われてしまったものの象徴を打倒したところでモコのもとへは何も帰らないことを承知で、しかし持て余す悲哀のためにモコは街のケーキ屋さんのシャッターを蹴りまくり、ぼこぼこにするのである。通報される前に、モコはしゃきしゃきとシャッターの前を離れた。次なる標的を探す血に餓えたモコ足は、キティちゃんの健康サンダルで武装している。

 

 

◆回転性盲目による社会のための回天革命テロリズム

 立ち上がって、半周回って、ゲロを吐いた。明晰夢だ。ゲロは目の覚めるようなアップル・グリーン。スライムにそっくりだった。ぴかりは晩御飯にはハンバーグを食べたはずだったけれど、お腹のなかではいろいろないろいろが働いているから、きっと、こうなっても不思議ではなかった。気持ち悪い、それから、眠たい。からだは軽い、もっともっと回転したかった。おかあさんがいないのが、少しだけ心細い。おかあさんは、どうしたら夢から覚めることができるのか、教えてくれなかった。今度は聞かなくちゃならない。だって、いま、ぴかりはほんとうに、泣きそうなのだ。

 こ・わ・い。

 

 

◆豚の巡礼記Ⅰ

 涙を拭うこともできず、萎えきった手で懸命に、私はマリの箱を取り出した。ミントグリーン、オレンジ、レモンイエロー、パステルカラーのラムネ菓子を三粒、飲みこんだ。香水は持っていないが、たくさんの香りを吸い込んだ私の呼気はすっかりジャスミンに侵されていたから、唾とともにえもいわれぬ香りが口中に広がった。
 ああ、ああ、目が回る。悲しい、嬉しい、寂しい、辛い、苦しい、穏やかだ、そして楽しい、気持ちがいい、あっ、いい、優しい、痛い、焼け付きそうだ。神よ、彼方はそこにいらっしゃるのですね。私の、拙私の背中に張り付けた耳で、どうかお聞きください。

 

 

 

さて、お気に召すものはありましたでしょうか?

抜粋しにくいんです、今回。一段落、一文、やったら長いものが多くて、紙面は真っ黒です。いままでの作品集のなかでは文字数がいちばんです。


そして読んでいただいておわかりかとは思いますが、今回の作品はこんな感じです。当社比、というか過激かつ飯マズかつ若干下品な物言いが散見されますので、苦手なかたにはご注意いただきたいかなあと思います。表紙を落ち着いたものにしてしまったので、こう、だますようなかたちになるとさすがに心苦しいので!

そんなわけで純文学にスペースをとった落山羊でございました。テキレボ当日、ぜひ遊びにきてくださいね!

かつ、無料配布スタンプラリーに参加しておりますので、スタンプ構えて待っております。無配も三種類ご用意する周到ぶりを見せたいです(願望)。無料配布の新刊は「おとスクラップ・テンプル」という不思議?な詩集です。京都旅行の思い出?を詩にした小冊子です。

こちらも面白いものになりましたので、スタンプラリーしにきてくださいね~。

 

それではまた!

 

 

 

落山 羊

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