『うつくしき貌』本文抜粋などなど

こんばんは~。
ただいま、無料配布冊子の中身を全面的にかえようということで四苦八苦しております。前回の無料配布『Selkie』と通ずるような、けれどもっと濃密な、というかんじに執筆中。間に合う自信がいまいちありませんが、きっと、大丈夫です。

5月4日第二十回文学フリマ東京
落山めのひとりサークル【ヲンブルペコネ】は一階純文学【B-12】でございます。
WEBカタログはこちら→https://c.bunfree.net/c/tokyo20/1F/B/12



お品書き
◎新刊『うつくしき貌』
  文庫判・本編118頁・五篇を収録した短篇集・300円。


◎既刊『ドライ・メライ・ドーリーズ』
  文庫判・本編136頁・七篇を収録した短篇集・300円。残部少ないです。

◎無料配布冊子・既刊『Selkie』
  A5の冊子。無料です。「無料で楽しむ文学フリマ」断然あり!と思って作ったものです。こちらだ
  けでもぜひ、もらいに来てくださいね。

◎無料配布冊子・新刊
  こちら未定ですが絶対に何らかのものは持っていくのでよろしくお願いします。



つまり、無料で楽しむ文学フリマとして、ヲンブルペコネでは二種類の小説が手に入るということです。無料配布は一般参加者さんと出展者、winwinな代物と思って作っているので、ぜひこれらだけでももらいに来てくださいませ。


さて今回の本題は、新刊『うつくしき貌』の本文抜粋紹介です。短篇集なもんで、あらすじをまとめるのはとっても難しく、(というか苦手で)、作品をよく表している、あるいはここはイイと個人的に思う文を本文から抜粋して、作品紹介とします。
ヲンブルペコネ苦手ぽい表紙してるけど、中身どうだろ~というかたにもおすすめです。読み物は相性です。また、わたくし落山のTwitterアカウント@You_Ochiyamaでもぽちぽちと雑記とともに本文紹介をしているので、よろしければご覧ください。



◆『淡水真珠・魔性』
 わたしは真珠と同じだ。「嫌になるわ。わたしたち、お互いに自分が、世界にひとりの人間だって思っていたいのに。いま、こうやって言っていることも、ほんとうは胸が悪いの……」。真珠は万媚の面で嗤う、「僕は、それほどでもないよ。だってお姉さんとお揃いになるもの。淡路、きみ、僕のことが嫌いになれないでしょ。僕もそうさ。きみのことがちっとも嫌いになれないんだ。ちょうど、自分をみているみたいにね」。


◆『失オルガノン』
 ピアノの黒鍵と白鍵の上を、手首は行ったり来たりしていた。そうして確かに奏でられ、音は捧げられる。ピアノ線は、黒い箱の中でほくそ笑んでいるに違いなかった。ハンマーがかわるがわる持ち上がって、スポンジみたいに頼りない円を振り下ろす。ああ、あの偏執的に整列したすべての線たちは、どうして小毬を裏切ったの?


◆『相律の葬列/白昼夢』
 目覚めてアンジュを乞い、微睡みにアンジュを乞う生活は、夏の幻影、アンジュの律の残滓が馨り、ぼくを幸福にするはずだった。不幸に陶酔することこそ、最上の幸福ではないかと、ぼくは思っていたのに。「ぼくはアンジュと交わらない」。いっときぼくに夢を見せたこのフレーズがもたらす、絶望!


◆『ワンダリング・セブン』
 劇的に、しかしながらひどく不恰好に、わたしの運命は引き攣れとして頬に隆起し、あるべき姿を捻じ曲げられた。いま傍らにいるひととの、怯えと苦悩と安楽のなかにある暮らしを考えれば考えるだけ、わたしは頬を撫ぜずにはおられない。
 だっておそろしくて痛い。
 なのに、焼き付いて、離れがたい。


◆『淡水真珠・聖性』
 藍色は暗く、そこかしこに満ちてわたしをうかがう。どんな路地を通っても、わたしを視るそのおそろしい眸は消えない。白昼の、すべてが白く飛んでしまった呆けた顔のほうが、わたしには安全に思える。ほんとうにすべてを見通してしまうのは、夜なのだから。夕立ちの名残りが、渇き餓えた黒い路面から、匂いやかに立ちのぼっていた。
 悲しいのかもしれない。叔母がわたしに飽いたこと、群青色の彼の存在する意味が、叔母の
気まぐれひとつで、陽炎のようにあやうくなってしまうということ。そして他ならないわたし自身が、その叔母に従ってしまいたくなること……。



こんな感じです。『失オルガノン』だけは、山猫文学会の冊子に寄稿したものを再録しましたが、他四篇はすべて書き下ろしました。
どうでしょうか。今回のテーマは『貌』ですが、それぞれがそれぞれ、色濃く意識されている作品たちになったかと思います。お気に入りというかおすすめは『淡水真珠』の両篇なのですが、こちらは対というか、互いに意識して書いた作品なので、おわりとはじまり、どちらも読んでください、ぜひ。

今回の本は自分の迷いがかなり出てしまった、と悩んでいたのですが、製本していただいてこうして手元に来たものを改めて読み返すと、それがいい味になっているなあと思いました。自分で言うのもなんですが。前回『ドライ・メライ・ドーリーズ』を気に入ってくださったかた、あるいは苦手だったかた、わりかし雰囲気が変わっておりますので、どちらにせよどうか、読んでみてください。
そして感想をいただけたら嬉しいなあ。(はやいですね)

そういえば前回のレイアウトを反省して、今回はかなり読みやすくなっております。

無配が無事終わったらまた!!
ブログを!!
更新したいですね。文フリ出展者のみなみなさまも、どうぞヲンブルペコネをよろしくお願いします。なんだかんだで二度目の参加なので、きんちょうします。



落山 羊



◎近況
正本ノンの『風物語in横浜』を読んで、あらためて自分には少女小説の血が流れているなと。それにしても『風物語in横浜』、いまだにバイブルって言うひとが多いのがすごくわかるというかめちゃくちゃよかった。時代を感じる。個人的にコバルトは最初期よりも第二期というか、ファンタジーブームのはじまりあたりが好きなので、氷室さんも初期作品はぜんぜん読んできていませんでしたが、これは読まなきゃなあと思いました。なんというかすごいよ、思春期だ。そして落山は何歳なのだ、と。いまのBGMはBARBEE BOYSです。




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